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岸記念体育館跡地を整備して代々木公園を拡張した新たな公園施設「代々木公園 BE STAGE(ビーステージ)」が、2月20日より一部エリアの供用を開始し、公園内の施設および店舗は3月15日以降、順次オープンしている。


左=岸記念体育館(2019年7月撮影) 右=2つのゾーンで拡張を計画し、今回オープンしたのは北側の「みどりと集いのゾーン(岸記念体育会館跡地)」(東京都「代々木公園整備・管理運営事業 公募設置等指針」より)
代々木公園の拡張工事は、国立代々木競技場を挟んで南東側に位置する「岸記念体育会館跡地」と、その南側にある「東京都水道局ポンプ所」を活用し、公園面積を4,182平方メートル拡大する計画だ。新たな公園の用途は、北側の「みどりと集いのゾーン(岸記念体育会館跡地)」と、南側の「雑木林とヒーリングガーデンのゾーン(現、東京都水道局ポンプ所)」の2つのゾーンで構成。特に「みどりと集いのゾーン」は、かつて日本のスポーツ競技団体の本部が集積していた「岸記念体育館」の跡地であることから、スポーツや健康増進を目的とした施設が整備される。また、両ゾーンを一体的に利用できる回遊性の高い空間設計がなされ、既存の代々木公園A地区(森林公園)・B地区(競技場・イベント広場など)との連続性を保ちながら、さらなる緑化も進められる予定だ。
「みどりと集いのゾーン」に新たな誕生した公園施設「代々木公園 BE STAGE(ビーステージ)」
Park-PFIを活用した新たな都市公園モデル
北側の「みどりと集いのゾーン」の開発にあたっては、東京2020大会後、東京都が都市公園法に基づく公募設置管理制度(Park-PFI)を初めて活用した取り組みとなる。Park-PFIは、公園利用者の利便性を向上と地方公団体の財政負担を軽減させるため、民間企業に管理運営を委託し、園内での飲食店や売店などの営業を許可することで、その収益を活用して公園の維持管理や改修等を行う制度である。
渋谷区初のPark-PFIとして、2021年4月にリニューアルオープンした「渋谷区立北谷公園」
渋谷区でも2020年に初めて導入され、2021年4月にブルーボトルコーヒーを併設する「渋谷区立北谷公園」が誕生している。自治体単独では難しい公園整備を民間の力で支え、より魅力的な空間へと発展させる新たな試みだ。
2021年8月に公園整備運営事業者のプロポーザルが実施され、11月には東急不動産を代表とする「代々木公園STAGES」(東急、石勝エクステリア、東急コミュニティーで構成)が指定管理者に決定。約3年余りの歳月を経て、今年2月から一部供用を開始し、3月中旬以降から順次開業が進められている。
「代々木公園 BE STAGE」- 新たな挑戦を生む場へ
新たに誕生した公園施設の名称は「代々木公園 BE STAGE」。「はじめる人になろう」をコンセプトに掲げ、訪れる人が新たな挑戦を始められる場となることを目指している。スケートボードやダンス、ランニング、ヨガ、音楽、アート、食など、多様なアクティビティを楽しめる環境を提供する。
施設ロゴには、一歩を踏み出す勇気を象徴する「BE」の文字が緑色でデザインされている。
中央に広がる「にぎわい広場」
先行して供用が始まった「BE STAGE」の中央部には、公園管理事務所のほか、人が集う「にぎわい広場」やイベント開催が可能な「発信テラス」、「アーバンスポーツパーク(スケートボード広場)」などが設けられている。


左=公園管理事務所 右=スケートボードが楽しめる「アーバンスポーツパーク」
さらに今後、Park-PFI制度を活用した3階建ての商業施設がオープンし、計8つの商業店舗が順次オープンしていく予定だという。
ハワイ・ワイキキの人気レストラン「Tiki’s Grill & Bar」(4月下旬開業)イメージ
まず、1階には、ハワイ・ワイキキで人気の「Tiki’s Grill & Bar」(4月下旬開業)が日本初上陸し、約160席の広々としたダイニングでハワイを代表するメニューを用意。また、店内で犬と一緒に食事を楽しめるドッグメニューや幅広いドッグサービスを提供する。隣接するカフェ「NORTH SHORE CAFE」(4月下旬開業)では、園内でテイクアウトできるマラサダ、アイスクリームやドリンクなどを販売する。


左=3月15日にオープンした「ニューバランス Run Hub 代々木公園」外観 右=「ニューバランス Run Hub 代々木公園」店内イメージ
2階には、ランナー向けの「ニューバランス Run Hub 代々木公園」(3月15日開業)がオープンし、ランニング関連商品を取り扱うほか、定期的なイベントも開催する。同じフロアには、渋谷未来デザインによるダンスやストリートスポーツのスタジオ「Spot. Yoyogi Park」(4月1日開業)も開設される。


左=教育施設「YOYOGI-PARK “まなぶ”」(4月下旬開業)イメージ 右=「YOYOGI-PARK “たのしむ”」(6月中旬開業)イメージ
3階には、セガサミーグループのMPandCとLifelong Kindergartenによる教育施設「YOYOGI-PARK “まなぶ”」(4月下旬開業)が開設し、一流指導者によるスクールや、探究学習プログラムを展開。もう一つのスペース「YOYOGI-PARK “たのしむ”」(6月中旬開業)では、ランニングステーションやボディメンテナンス、フィットネスなどのサービスを提供し、身体的・精神的な健康促進をサポートする。
6月頃には屋上スペースに「バーベキュー広場」や「アクアポニックス」の水槽も設置予定
屋上には、「バーベキュー広場」(6月頃)が開業予定で、都市の中心で自然を感じながらバーベキューを楽しめる。また、環境への配慮を意識し、魚の養殖と野菜やハーブの水耕栽培を組み合わせた「アクアポニックス」の水槽も設置予定。現在工事中のエリアも含め、6月頃までに「BE STAGE」がほぼ完成する見通しとなっている。
ファイヤーストリートから原宿駅へと続くこのエリアは、山手線を挟んだ向かい側の明治通り沿いに比べて人通りが少なく、これまであまり目立たない存在だった。今回、BE STAGE のオープンをきっかけに街の風景が変化し、公園と都市が融合する新たなモデルとして、スポーツや健康を軸としたコミュニティの拠点となることが期待されている。多様な人々が集まり、新たなカルチャーが生まれる場として成長していけるか、今後の展開に注目が寄せられる。