JR渋谷駅は、2025年初頭から春にかけて駅改札および出入口の動線が大きく変化している。1月26日には「ハチ公改札」が移設され、3月30日には「渋谷駅西口」の通路および出入口が移動した。これらの動きは、将来的に整備される予定の2本の東西自由通路の基盤づくりの一環であり、駅全体の再構築が着実に進行していることを示している。

左＝ハチ公像側のハチ公改札（撮影2025年1月14日）　右＝ハチ公改札が閉鎖され仮囲い設置（撮影2025年4月9日）

ハチ公ファミリーの陶板（撮影2025年1月14日）。既に陶板は撤去され仮囲いが設置されている

左＝ハチ公改札移設前のJR渋谷駅（撮影2025年1月14日）　右＝駅解体工事が進み駅外観も様変わりした（撮影2025年4月9日）

まず1月には、渋谷駅の象徴的存在でもある「ハチ公改札」が移設された。以前は、ハチ公前広場側と交番側の2カ所に出入口が設けられていたが、改修によりこれらは廃止され、宮益坂側に約60メートル移動した場所に新たなハチ公改札が設置された。これに伴い、忠犬ハチ公像に近い改札口のすぐ横にあった地下階段（しぶちかや東急田園都市線へと通じる階段）も閉鎖された。

左＝「入場」「出口」専用に人の流れを分け、混雑を緩和する「ハチ公口」（撮影2025年4月9日）　右＝宮益坂側の出入口（撮影2025年4月9日）。宮益坂寄りに約60メートル移動した「ハチ公改札」。左側の入場専用を進むと、新しい「ハチ公改札」がある。

新しいハチ公改札口前の通路中央には仕切りが設けられ、「入場」と「出口」専用の一方通行の動線が導入された。これにより、ハチ公広場方面と宮益坂方面への人の流れが明確に分離され、駅構内の混雑緩和が図られている。利用者が改札に入る場合は一度宮益坂側（東口側）へ抜けてからUターンする必要がある。また、電車を利用しない通行者は、旧大山街道沿いの高架下歩道を通って往来することになる。

ハチ公広場に掲出されている「再開発後のJR渋谷駅」イメージ。赤い矢印が、将来完成する2本の東西自由通路。A＝ハチ公広場　B＝宮益坂側の出入口　C＝渋谷駅西口　D＝渋谷スクランブルスクエア東棟のエスカレーター前（JR南改札口近く）

このハチ公改札の移設は、2015年より進められている渋谷駅改良工事の一環であり、利便性の向上と将来的な駅構内の再編成を目的としている。将来、幅員22メートルの東西自由通路（AとBをつなぐ通路）が同所に完成する計画である。

続いて先月3月30日には、「渋谷駅西口」通路および「南改札」付近の動線も大きく変更された。従来、西口ロータリーに面していた「渋谷駅西口」の出入口は、ハチ公広場寄りの北側に約50メートル移動し、旧モヤイ像や喫煙所があった付近に新たな西口の出入口が設けられた。現在も再開発工事が進行中であるため、この新たな出入口から渋谷フクラス側へと続く動線には、仮囲いで囲まれた仮設の通路が設置されている。

JR渋谷駅西口がハチ公広場寄りに約50メートル移設（撮影2025年4月9日）

3月30日、新しく開設された「JR渋谷駅西口」に向かう通路（マップC）

新しい渋谷駅西口の通路を抜けると、渋谷スクランブルスクエア東棟１Fのエスカレーター前に出る（マップD、撮影2025年4月9日）。将来的に同通路は、幅員23メートルの東西自由通路（CとDをつなぐ通路）になる

この通路変更の背景には、旧東急百貨店東横店および旧JR渋谷駅西口駅舎の解体、さらには渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟の新築工事の進捗がある。また、ハチ公口の東西自由通路と同じく、将来的に渋谷スクランブルスクエア東棟側と渋谷フクラス側（西口）をつなぐ、幅員23メートルの東西自由通路の整備が計画されている。今回の通路移動は、その土台となる。

通路移設に伴い、南改札周辺の旧通路や出入口は封鎖され、今後、東横店跡や駅舎の一部として機能していた建物群は撤去され、駅周辺の景観は大きく変貌を遂げる。加えて、渋谷フクラス前にあった旧タクシー乗り場も閉鎖され、2025年5月初旬には同施設地下3階に新たなタクシー乗り場が開設される予定である。

こうした一連の動線変更により、JR渋谷駅を日常的に利用する通勤・通学者にとっては、一時的に遠回りを強いられるなどの不便が生じているのも事実である。しかしこれは、将来的に東西の往来をよりスムーズにするための「進化の過程」であり、今しばらくの辛抱が求められる。

取材・執筆

編集部・フジイ タカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。