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【レポート】東西をつなぐ「未来の空中回廊」 渋谷「スカイウェイ」工事現場を歩く
2025-07-08
東京メトロ銀座線・渋谷駅の直上に整備される空中回廊「東口3階スカイウェイ(仮称)」の建設現場見学会が2025年7月8日、報道関係者向けに開かれた。
渋谷駅再開発の「最終章」とも言える「スカイウェイ」は、2030年度の供用開始を目指して整備が進められている。渋谷ヒカリエ4階部の北側、東京メトロ銀座線の真上に設けられる「ヒカリエデッキ(宮益坂方面)」から、JR渋谷駅を経由し、渋谷マークシティ(道玄坂方面)へと続く、東西を結ぶ壮大な空中歩行者ネットワークの一部だ。
上空から見た「東口4階スカイウェイ」。渋谷の街を東西でつなぐ架け橋となる
この日見学したのは、銀座線・渋谷駅の屋根直上に位置する「4階東口スカイウェイ(仮称)」の建設現場。全長は約115メートル、幅は約8メートル。さらに5メートルの延伸工事が予定されている。現在は床や柵などの仕上げ工事を残しているものの、歩行者デッキとしての構造はすでに完成間近だ。完成すれば、JR渋谷駅直上の中央棟4階と西口のアーバン・コアに接続し、ハチ公広場や渋谷マークシティへの移動が格段に便利になる。
西側から見た「東口4階スカイウェイ」(中央は渋谷ヒカリエ)
「渋谷の街はこれまで、幹線道路や鉄道によって分断されてきました。こうした課題を解消するため、各事業者と連携し、回遊性の高い動線整備を進めてきました。今回のスカイウェイは、その“ラストピース”的な存在です」と語るのは、再開発を担当する東急株式会社 都市開発本部の鈴木陽一郎さん。
「現在の渋谷駅周辺は非常に混雑しており、とくにインバウンド観光客の増加で動線が集中しがちです。スカイウェイの整備によって人の流れが分散され、混雑の緩和につながります」と期待を寄せる。
空中に浮かぶ通路、そのスケールと開放感
スカイウェイの上に立つと、眼下に広がるのは、まさに「新しい渋谷」の眺望だ。新宿方面を望めば、宮益坂下交差点や明治通り、その奥には神宮の森、さらには新宿副都心の高層ビル群まで一望できる。
スカイウェイから眺めた明治通り(新宿方面)の景色
一方、恵比寿方面には、国道246号線の上に整備された「東口デッキ」や首都高速、そして右手にはGoogle本社が入る「渋谷ストリーム」の姿も見える。
スカイウェイから眺めた明治通り(恵比寿方面)の景色
スカイウェイの先端からは、進行中のJR渋谷駅改良工事(将来、渋谷スクランブルスクエア中央棟となる)の様子も間近に観察できる。かつてこの場所にあった東急東横店西館やJR渋谷駅の構造物はすでに解体され、その内部にあった銀座線やJR線の姿、さらに新たな駅施設の骨格が徐々に見え始めている。
スカイウェイ先端から眺めたJR渋谷駅改良工事の様子。左側は渋谷フクラス、中央は渋谷マークシティ
上記写真と同じ場所(スカイウェイ)から眺めた将来のイメージ。中央屋根は「西口アーバン・コア」で、スカイウェイのある4階からハチ公広場のある地上レベルまでスムーズな縦移動を促す。右側の施設は、先端施設となる「4階パビリオン」(画像提供=渋谷駅街区共同ビル事業者)
将来的には、この地点に隈研吾さんの建築事務所が設計を手がける「4階パビリオン」が整備され、渋谷スクランブル交差点を空中から眺める新たなスポットとなる予定だ。
中央棟4階パブリオンの周縁を囲むように階段が整備され、中央棟先端部から渋谷スクランブル交差点・ハチ公広場を一望できる(画像提供=渋谷駅街区共同ビル事業者)
「スカイウェイを歩くと、今までとはまったく違う渋谷の景色が見えてきます。これまでは西口のハチ公広場側ばかりが注目されていましたが、今後は東口にも広場など魅力ある空間が生まれます。スカイウェイは、将来的に新たな観光スポットになる可能性も秘めていると思います」と鈴木さん。
「100年に一度」の渋谷大改造、完成へ向けて
渋谷駅街区の再開発は、2009年の東京メトロ副都心線渋谷駅の移設工事着手に始まり、2014年の渋谷スクランブルスクエア第1期(東棟)着工、2019年の開業へと続いた。2020年には銀座線渋谷駅の新駅舎供用開始、JR埼京線ホーム移設、山手線ホームの島式化、2025年にはスクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)の建設着工と、鉄道の運行に支障をきたさないよう配慮しながら段階的に進められてきた。


12年前の渋谷駅東口周辺と銀座線(2013年撮影)。この10年で東口エリアが大きく変化を遂げたことが分かる
そして、スカイウェイおよびスクランブルスクエア第Ⅱ期は、この約20年にわたる渋谷再開発の“集大成”とも言えるプロジェクトとなる。スカイウェイは2030年度、スクランブルスクエア第Ⅱ期は2031年度の完成が予定されている。
2034年、渋谷駅完成イメージ(画像提供=渋谷駅街区共同ビル事業者)
2030年、東西分断を解消し、誰もが快適に歩ける渋谷へ
渋谷マークシティ方面までが空中でスムーズにつながり、鉄道や幹線道路、高低差によって断絶されていた街が立体的に再構成される。さらにこの空中通路は、単なる移動手段ではなく、新たな観光資源としても注目されている。完成後は、渋谷スクランブル交差点、忠犬ハチ公像、渋谷スカイに並ぶ「観光スポット」として人気を博しそうだ。
左から渋谷ヒカリエ(2012)、渋谷ストリーム(2018)、渋谷スクランブルスクエア東棟(2019)
完成まであと5年。100年に一度の再開発のクライマックスが、いま静かにその輪郭を現し始めている。渋谷は「分断の街」から「つながる街」へと生まれ変わる。雑踏に埋もれず、迷わず、誰もが快適に歩ける渋谷。歩道橋でも、地下道でもない、新しい都市の風景が誕生しようとしている。
最後に渋谷駅前エリアマネジメント協議会が公開した「再開発の完成イメージ動画」をぜひご覧いただきたい。「未来の渋谷駅」の姿が、より鮮明に浮かび上がるはずだ。
完成イメージ動画(渋谷駅前エリアマネジメント協議会)