SHIBUYA × WATCH
「DIG SHIBUYA 2026」の公式プログラムとして、渋谷公園通りで2月14日、路上パフォーマンス「Street×Theater ―未来の渋谷への伏線―」が行われた。
渋谷のメインストリート・渋谷公園通りの一部を交通規制し、数時間限定の「都市劇場(テアトロン)」が出現した。道路上に設けられた有機的なフォルムのバルーン構造体の設計を手がけたのは、建築家・津川恵理さん率いるALTEMY(アルテミー)。

「テアトロン」を手掛けた建築家・津川恵理さん
津川さんは「2年前、この道路のデザインコンペに採択いただき、今回はその提案を実際の場で試す社会実験になる。周囲に置かれた白い風船のようなオブジェに腰掛けながら、道路空間が舞台へと変わっていく体験を楽しんでほしい。『街から文化を、道から文化を生む』という考えのもと、道路をテアトロン、つまり劇場へと変えていく試み」と話す。


公園通りに設置された「白いバルーン」に腰掛けたり、寝転んだりする人の姿や、子どもたちがその上で跳ねて遊ぶ様子も見られた
平面に散らばる水滴のような配置は、道路上に自然な滞留や視線の結節点を生み、そこにいる人々をゆるやかに舞台へと取り込んでいく。観客席は設けず、街にいることそのものが鑑賞行為になる――。そんな状況が、公園通りの日常風景の上に仮設された。
かつて公演通りの東京山手教会の地下には、アングラ文化の聖地として知られた小劇場「渋谷ジァンジァン」があった。さらにミニシアター「シネマライズ」や「シードホール」「PARCO劇場」など、映画館や劇場、文化施設が集積し「劇場の街」とも称された渋谷の街。今回の取り組みは、その歴史的な系譜を踏まえ、公共空間での新しい表現のあり方を提示するチャレンジといえる。
ノンバーバルな表現が導く都市の未来像
パフォーマンスの上演時間は約30分間、15時30分と16時15分の計2回行われた。身体と音楽によるノンバーバルな構成で、「ストリートから劇場へ」というコンセプトが提示された。

Cwondoさんの電子音を駆使したアグレッシブな生演奏の様子。蓮沼執太さん、野口文さんとの共演は、かなり贅沢だ
音楽を担当したのは、国内外で幅広く活動する音楽家の蓮沼執太さん。野口文さん、Cwondoさんとの協働により制作されたサウンドが、都市の環境音と交差しながら空間の輪郭を描いていく。

日本を代表するヒップホップダンスユニットRushBall
言葉による説明を排除し、観客はそれぞれの立場で都市の姿を受け取り、想像を重ねる。ストリートに開かれた表現のあり方が、ここでは試されていた。


高村月さん、三浦琉那さんらのパフォーマンス

KADOKAWA DREAMSらも加わり、沿道で見守る人々の視線も熱を帯びていった
出演したのは、世界を舞台に活動するフィメールデュオRushBall、D.LEAGUEで史上初の連覇を果たしたKADOKAWA DREAMS、舞台や映像など領域横断的に活躍する高村月さん、独自の身体表現で注目を集める三浦琉那さんら。観客との距離は極めて近く、視線や気配の動きまでもが上演の一部となる。

通りを行き交う人、足を止めた買い物客、偶然居合わせた観光客――多様な存在が混ざり合い、ひとつの風景をかたちづくっていく。
公演終了後、構造体は撤収され、公園通りは再び日常の交通空間へ戻るが、この日示されたのは、渋谷のストリートが「文化の舞台」へと転換し得るということ。公共空間をどのように開き、誰が主役になれるのか。今回の取り組みは、渋谷という都市が持つ潜在力を可視化するとともに、ストリートを活用した新たな展開への期待を感じさせた。








