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100年に一度といわれる大規模な再開発が進行中の渋谷駅。2000年に東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が決定されたことを契機に、2012年4月には地下化された東横線渋谷駅の直上に「渋谷ヒカリエ」(旧東急文化会館跡地)が開業し、それを皮切りに再開発が加速した。2018年9月には「渋谷ストリーム」(旧東横線線路跡地)、2019年10月には「渋谷フクラス」(旧東急プラザ渋谷跡地)、同年11月には「渋谷スクランブルスクエア東棟」(旧東横線地上駅舎跡地)が次々と完成した。さらに2024年7月には「渋谷サクラステージ」(桜丘町)が本格開業し、渋谷駅周辺の景観は大きく様変わりした。
当初、再開発の全体完成は2027年度を予定していたが、整備計画や着工スケジュールの変更に伴い、すべての工事が完了するのは9年後の2034年度となることが明らかとなった。100年に一度の渋谷駅の大改造は、相互直通運転の方針決定から30年以上をかけて、2034年度にようやく完結することになる。
再開発完了後のスクランブル交差点方面からの視点(ネットワーク図)
今後は、「渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)」の着工・竣工や、銀座線渋谷駅直上に設けられる空中回廊「4階東口スカイウェイ」の供用開始、さらにハチ公広場の整備など、渋谷駅街区のフィナーレに向けた開発工事が順次進められる予定である。「最終章」に向けた工事後半に向けて、今回、開発を担う東急、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東京地下鉄(東京メトロ)の三者から、具体的な計画が発表されたことを受け、今後の再開発スケジュールを時系列で確認していく。
2030年度、 スカイウェイなど東西を結ぶ歩行者動線整備
渋谷駅周辺は、鉄道や幹線道路、さらには坂道による高低差が複雑に交差しており、歩行者にとって決して快適な環境とは言えない。現在進行中の渋谷駅再開発工事では、駅ビルの建設にとどまらず、通路や改札、階段といった駅施設、さらには駅機能を支える主要構造の改良も含まれている。中でも、JR線や明治通りなどによって分断されている宮益坂方面と道玄坂方面を、空中および地上から結ぶ多層的な歩行者ネットワークの整備は、再開発における重要な目的の一つである。2030年度には、長年にわたって進められてきた渋谷駅の改良工事がようやく完成形を迎え、駅は新たな姿を現すこととなる。
近未来的な空中回廊「スカイウェイ」供用開始へ
銀座線渋谷駅直上の「4階東口スカイウェイ(仮称)」。渋谷ヒカリエ方面から渋谷マークシティ方面へ東西に伸びる空中回廊(宮益坂交差点方面からの視点)
まず、空中レべルでは、JR線および東京メトロ銀座線の3階コンコースの整備に加え、銀座線渋谷駅の直上に「4階東口スカイウェイ(仮称)」が整備される。渋谷ヒカリエ4階のヒカリエデッキから銀座線渋谷駅直上(屋根の上)と接続し、JR渋谷駅の東西を結ぶ空中回廊が供用を開始。スカイウェイを通じて渋谷スクランブルスクエア中央棟(4階)と接続するほか、渋谷マークシティ(京王渋谷駅)方面までスムーズな移動が可能となる。スカイウェイ上からは、新宿方面や恵比寿方面までを一望できる眺望が得られ、東棟の展望施設「SHIBUYA SKY」と並び、渋谷を象徴する新スポットとなることが期待される。
供用開始後のスカイウェイのイメージ(動画提供=東急株式会社、渋谷駅前エリアマネジメント、まちびらき推進委員会)
南北をつなぐ「西口3階上空施設」整備
「渋谷スクランブルスクエア西棟」の西側3階部の前面に整備される、歩行者デッキ「西口3階上空施設(仮称)」のイメージ
また、渋谷フクラスの向かい側に建設予定の「渋谷スクランブルスクエア西棟」の西側3階部の前面には、約3,000平方メートルの歩行者デッキ「西口3階上空施設(仮称)」が整備される。
3階改札前コンコースのイメージ
3階部にはJR渋谷駅改札も新設されるため、デッキを通じて改札から渋谷中央街、桜丘方面への南北移動が容易となる。同施設の設計は、渋谷駅中心地区デザイン会議の座長を務め、銀座線渋谷駅の設計なども手掛けた建築家・内藤廣さんが率いる内藤廣建築設計事務所が担当する。
幅広の「東西自由通路」を2本整備
東西自由通路のイメージ。幅員20m以上の広々とした通路の整備で、通勤ラッシュ等の混雑を緩和する
一方、地上レベルでは、JRハチ公改札前に最大幅22m、JR南改札前には最大幅23mの「東西自由通路」がそれぞれ2本整備され、東西方向の円滑な移動が可能となる。これにより、宮益坂方面(東側)および道玄坂方面(西側)へのアクセス性が大幅に向上し、渋谷駅の長年の課題であった混雑の緩和も図られる。日々渋谷を使用する通勤や通学利用者はもちろん、観光客にとっては、利便性が高く、開放感のあるわかりやすい駅空間が整うこととなる。
これらの空中(歩行者デッキ)および地上(幅員の広い東西自由通路)の整備により、渋谷スクランブルスクエアを中心として、上層からも下層からも宮益坂方面(東側)と道玄坂方面(西側)の間をスムーズに移動できる都市構造が実現する。
2031年度、「渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟」完成へ
再開発完了後の駅前風景。渋谷スクランブルスクエア3棟が「渋谷の新たな顔」となる(スクランブル交差点からの視点)
渋谷スクランブルスクエア第II期(中央棟・西棟)は、2031年度に完成する。商業フロアは、2019年11月に開業した「東棟」と合わせて、1フロアあたりの売場面積が最大約6,000平方メートルの大規模な商業施設となる見込みである。
さらに「中央棟」の10階屋上には、各国大使館などと連携し、国際的な文化交流体験を提供する施設「10階パビリオン(仮称)」が整備される予定だ。同施設からは、渋谷スクランブル交差点や大型ビジョンに象徴されるハチ公広場側の景観と、新宿方面の街並みの両方を一望できる。なお、「10階パビリオン」のデザインは、プリツカー賞を受賞し、国際的に高い評価を得ている建築ユニット・SANAAが手がける。
2034年度、「ハチ公広場」など5つの広場空間が整備
ハチ公広場に整備される「アーバン・コア」。スカイウェイに接続する4階からハチ公広場(地上)までの縦移動をスムーズにする
中央棟・西棟の完成後、2033年度には中央棟4階に、最先端技術を活用したコンテンツを体感できる施設「4階パビリオン(仮称)」および、中央棟4階とハチ公広場(地上)を結ぶ歩行者ネットワークの向上を目的とした縦軸移動空間「アーバン・コア」が整備される。
先端技術の発信拠点となる 「4階パビリオン」イメージ
「4階パビリオン」は、JR山手線・埼京線の直上に位置し、渋谷スクランブル交差点を至近で見渡せるロケーションとなる。同施設は先端技術の発信拠点として、渋谷の新たな象徴となる施設を目指すという。なお、デザインは、渋谷スクランブルスクエア東棟の低層部を設計した隈研吾建築都市設計事務所が手がける。
広場位置図。上層階から地上まで駅周辺に整備される5つの広場
加えて、2034年度までには「ハチ公広場」「東口地上広場」「中央棟4階広場(JR線路上空・仮称)」「西口3階上空施設(仮称)」「中央棟10階広場(仮称)」の5つの広場空間が、計約20,000平方メートル規模で整備される予定だ。
各広場はいずれも、にぎわいと憩いを提供し、非常時には「一時避難場所」としての機能も果たすという。渋谷駅至近ながら「憩い・潤い・リラックス」を感じられる広場が、上層階、地上階に一気に増え、渋谷らしいストリート文化発信の新たな空間として期待される。