SHIBUYA × WATCH
渋谷ヒカリエの屋外歩行者空間「ヒカリエデッキ」4階で11月3日、ワークショップ「アーティストと一緒に、渋谷に生息する“生き物キーホルダー”を作ろう!」が開かれ、親子連れなどが参加した。
同ワークショップは、10月31日から開催されている参加型アートイベント「渋谷 to 森 ~渋谷に生き物の森を作ろう!~」の一環。東急が主催し、アートフロントギャラリーが企画協力する。再開発が進む渋谷の中心部で、都市と自然の共生をテーマに、アートを通じて身近な生き物や命のつながりを感じてもらうことを目指す。

アーティストの長谷川仁さん
作品を手がけたのは、北海道出身のアーティスト・長谷川仁さん。大学で社会学を学んだ後、渋谷の桑沢デザイン研究所でプロダクトデザインを学び、アーティストとして活動を始めた。現在は各地の芸術祭やパブリックアート、参加型の作品制作などに取り組んでいる。


渋谷に生息する生き物たち。「オシドリ」(左)、「アブラコウモリ」(右)


代々木公園など、意外にも緑が多い渋谷には、さまざまな生き物がいる。写真はタヌキ(左)とニホントカゲ(右)


ゴキブリ(左)や、ヒト(右)も、「小さな森」の住人として暮らしている
会場では、ヒカリエデッキの植栽エリアを「小さな森」に見立て、長谷川さんが制作した渋谷の街並みや、スズメ、ハシブトガラス、アブラコウモリ、タヌキ、ゴキブリ、アリ……、そしてヒトなど、渋谷周辺に生息するさまざまな生き物のパネルを製作し展示。植栽の間にはおもちゃの電車のレールを敷き、木々の下をトンネルのようにくぐりながら、電車が森の中を巡る仕掛けを設けた。

ヒカリエデッキの小さな森を抜け、生き物たちを乗せた電車が行き交う
長谷川さんは「最初は別の作品を考えていたが、細長く続く(ヒカリエデッキの)植栽を見て、ここを森に見立て、何か動くものを取り入れたいと思った」と振り返る。代々木公園や明治神宮など、渋谷周辺には豊かな自然が残されていることにも着目し、「実は身の回りにこれだけ多くの種類の生き物がいることを、子どもたちに知ってほしかった」と話す。

ヒカリエデッキに沿って続く植栽を見て、今回のアイデアを思いついたという長谷川さん
自分で描いた生き物が「小さな森」を巡る
前日までの雨も上がり、青空が広がった当日は、幼稚園児や小学生を連れた親子などがワークショップに参加した。参加者は好きな形の透明なアクリル製キーホルダーを選び、マジックで思い思いの生き物を描いた。会場には「渋谷の生き物」の一覧も用意され、参加者が身近な生き物について知り、イメージを膨らませながら制作できるよう工夫した。

「生き物キーホルダーづくり」ワークショップの様子


参加者はアクリル板にマジックで思い思いの生き物を描いていく
完成したキーホルダーは、会場内を走るおもちゃの電車に乗せ、植栽の中を巡らせる。自分が描いた生き物を乗せた電車が近づくと、子どもたちは「電車が来た、来た!」と声を上げ、走り去る電車を追いかけるなど、楽しそうな姿を見せた。

「これ、僕のだよ!」。自分で描いた生き物が「小さな森」を駆け巡る様子に興奮する子どもたち
キーホルダーは一つ持ち帰ることができ、電車に乗っているほかの作品と交換することも可能。自分が描いた生き物を森に残し、誰かが描いた別の生き物を持ち帰るという仕組みで、作品を通じた人と人とのつながりも表現している。


子どもたちが描いた生き物たち。すずめ(左)、アオダイショウ(右)


アゲハチョウの幼虫(左)やカメ(右)など、かわいらしい生き物たちが次々と誕生
長谷川さんは「自分が作った生き物が電車に乗って森を巡り、誰かの作品と交換される。持ち帰ったキーホルダーを、また別の友達にあげることもあるかもしれない」と話し、作品が人から人へと渡っていくことにも「循環」の意味を重ねる。

アートを通じて伝える「命の循環」
今回の作品の根底にあるのは、長谷川さんが近年の制作活動でテーマにしている「命や物質の循環」だ。生き物はほかの生き物を食べ、やがて死を迎え、分解されて土へと還る。そうした自然界の循環を、森の中を繰り返し走る電車の動きに重ね合わせた。

「生き物=命」を乗せた電車が連なって走る
「人間も自然の一部。私たちは、さまざまな生き物とつながりながら生きている。そうしたつながりを少し意識するだけで、人や生き物に対して、もう少し寛容になれるのではないか」とし、「最終的には、少しでも生きやすい世の中になればという思いでアートを続けている」と語る。

生き物たちが小さな森を巡る様子を通じて、「命の循環」を伝えたいという
ワークショップについて、長谷川さんは「小さな子どもが多く、渋谷にいる生き物を描くという趣旨は少し難しかったかもしれないが、みんな楽しそうに参加してくれている。自分が描いた生き物を乗せた電車を追いかけるのも楽しいと思う」と笑顔を見せる。中には自分のおもちゃの電車を持参した子どももいたといい、「楽しみにしてくれていた人もいたようで、うれしかった。今後は子どもだけでなく、もう少し幅広い年齢の人にも参加してもらえたら」と期待を寄せる。
大都会・渋谷に息づく生き物に気づいてほしい
長谷川さんにとって渋谷は、幼い頃から縁のある街でもある。両親が桑沢デザイン研究所の出身で、子どもの頃は東京を訪れるたびに、渋谷の画材店や東急ハンズなどに足を運んでいたという。今回の作品でも、渋谷らしいにぎやかな看板を配した架空の駅を制作し、電車が街から森へと向かう世界観を表現した。

「パッと見たときは、かわいらしい電車が走っていると感じてもらうだけでもいい。でも、ここで見た生き物を街で見かけたときに、何かつながりを感じてもらえたら。大都会の渋谷にも、実はいろいろな生き物がいることに気づいてほしい」と長谷川さん。日頃は通り過ぎてしまう植栽にも目を向け、都市の中に息づく自然を感じるきっかけになればと願う。

現在は柵で閉鎖されているが、将来的には渋谷駅の東西を結ぶ「スカイウェイ」と接続する予定のヒカリエデッキ
ヒカリエデッキは、渋谷ヒカリエの北側、東京メトロ銀座線の線路上部に整備された歩行者空間で、2021年7月に先行開業した。将来は渋谷駅の東西をつなぐ歩行者動線「スカイウェイ(仮称)」の一部となる計画。渋谷ヒカリエではこれまでも、施設の外壁を活用した大規模なアート作品の展示などに取り組んできた。今回は植栽エリアにも展示空間を広げ、来街者が自由に参加できるワークショップを初めて企画した。
ワークショップは11月7日・8日にも開催する。開催時間は13時~16時(最終受付15時45分)。参加費は100円で、自然環境保全活動に寄付する。予約不要。
- アーティストと一緒に、渋谷の「生き物キーホルダー」を作ろう!
- 開催:2026年11月7日(土)、8日(日)
- 時間:13:00~16:00(最終入場15:45) ※小雨決行、荒天中止
- 会場:ヒカリエデッキ(渋谷ヒカリエ4階屋外)
- 予約:不要
- 料金:100円 ※参加費はアーティストを通じて自然環境保全活動への寄付につなげる。
取材・執筆:フジイタカシ / 撮影:大鶴剛志







