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浸水時、来街者を安全に誘導するために ―― 渋谷駅周辺で地元主体の合同訓練を初開催
渋谷駅東口地下広場

浸水時、来街者を安全に誘導するために ―― 渋谷駅周辺で地元主体の合同訓練を初開催

「渋谷駅東口地下広場 合同浸水対策訓練」が7月28日、渋谷駅東口地下広場で行われ、関係者約30人が参加した。

「東急コミュニティー」と「渋谷駅前エリアマネジメント」が主催した同訓練。渋谷区や東京都、渋谷消防署、鉄道事業者などの協力のもと、猛烈な雨で渋谷駅周辺の道路が冠水し、地下空間にも水が迫る状況を想定した。

「谷底」に人と水が集まる渋谷駅は

渋谷駅は、道玄坂や宮益坂などに囲まれた「すり鉢状」の地形の底に当たる場所。駅周辺には渋谷川や、現在は暗渠化されている宇田川があり、過去には集中豪雨により、地下鉄構内や地下街へ水が流れ込む被害も起きている。

鉄道や商業施設などが集まる渋谷駅周辺は、海抜約15メートルと低く、道玄坂や宮益坂などの周囲の坂(標高約30〜34メートル)から雨水が集中する

さらに、渋谷駅一帯には鉄道や地下街、商業施設、オフィスなどが集まり、その管理主体はさまざま。大雨による浸水から来街者の安全を守るには、施設や組織の垣根を越えた日頃からの連携が重要になる。

周辺道路の冠水を想定、B6出口方面へ避難誘導

当日参加したのは、渋谷区、東急電鉄、渋谷地下街、渋谷スクランブルスクエア、渋谷ヒカリエ、渋谷ストリーム、渋谷フクラス、渋谷サクラステージ、渋谷マークシティ、渋谷アクシュなど、駅周辺の施設や鉄道事業者の防災担当者約30人。管理主体の垣根を越え、避難誘導や浸水対策の手順を確認した。

訓練に先立ち、あいさつをする渋谷駅前エリアマネジメント代表理事の三渕卓さん

冒頭、三渕さんは、「これまでは東京都の地下街等浸水対策協議会が合同訓練を行ってきたが、今回から地元主体で実施することになった。それぞれの視点から見つかった課題を共有し、各自の組織に持ち帰ることで、渋谷の街の防災の取り組みがさらに強化されることを願っている」とあいさつした。

訓練は、台風の接近に伴う大雨で、渋谷区から警戒レベル3「高齢者等避難」に続き、警戒レベル4「避難指示」が発令されたとの想定で開始。駅周辺の道路が冠水し、渋谷川が氾濫危険水位に達したとして、地下空間にいる人を周辺建物の2階以上へ誘導する「垂直避難」を行った。

拡声器を使って避難を呼びかける誘導員役

参加者は誘導員役と来街者役に分かれ、東口地下広場(地下2階)から地上階へ移動するためB6出口方面(渋谷スクランブルスクエア東棟)へ避難。来街者役には、外国人や車いす利用者、トイレやパウダールームにいて避難放送を聞き逃した人、スマートフォンで現場を撮影し続ける人など、それぞれ異なる設定が与えられた。誘導員役は声やジェスチャーを使いながら、来街者役を周辺建物の2階以上へ案内した。

階段で車いす利用者を補助しながら避難誘導する

渋谷スクランブルスクエア東棟のアーバンコアと接続する「B6出口」を経て、2階以上の安全な場所へ「垂直避難」する様子

地下への浸水を防ぐ防水板、設置手順を確認

駅や商業施設などへの浸水を防ぐ防水版設置に関する説明

避難誘導に続き、参加者は渋谷スクランブルスクエア1階へ移動し、建物の出入り口に防水板を設置する様子を見学した。防水板は、大雨の際に出入り口などから地下空間へ水が流れ込むのを防ぐ設備。

担当者は設置手順を説明しながら、防水板を出入り口の溝にはめ込み、金具で固定した。参加者は、板を運び始めてから出入り口を封鎖するまでの一連の動きを確認した。

建物の出入り口に防水板を2枚設置する様子

ARや模型で浸水を疑似体験

訓練後、「浸水疑似体験イベント」を実施

訓練ではこのほか、浸水の怖さや雨水対策の仕組みを学ぶ体験も行われた。水圧体験装置「水圧くん」では、たまった水によって扉にかかる力を再現。扉を開けるのに想像以上の力が必要となり、簡単には開けられないことを実感する参加者が多く見られた。

「水圧くん」で浸水時に扉へかかる力を体験する参加者。水深10cmで3.5kg、水深30cmで31.5kgもの力が扉にかかり、扉を容易に開くことができない

「AR浸水シミュレーター」では、渋谷駅周辺が浸水した状況を疑似体験した。参加者は両足に2キロずつの重りを付け、浸水時の歩きにくさも体感。水があふれると視界が悪くなり、思うように動けず、周囲の状況を判断することも難しくなる怖さを味わった。

「AR浸水シミュレーター」で渋谷駅地下の浸水を疑似体験。参加者はヘッドセットを付け、足に重りを付けて地下内を歩こうとするが、思うように移動ができない

雨水浸透模型「浸透するぞーくん」と雨水流入模型「雨ますくん」では、街に降った雨が地面に染み込んだり、道路の雨水ますから排出されたりする仕組みを紹介。雨水ますが落ち葉や車両乗り入れ用のブロックなどでふさがれると、雨水が排出されず、道路冠水につながる様子も再現した。参加者は模型を囲み、普段は目立たない設備の清掃や管理も浸水対策につながることを学んだ。

模型を使って雨水対策の仕組みを学ぶ参加者

落ち葉やごみで「雨水ます」が詰まると、雨水が下水道へ流れにくくなり、浸水が起きやすくなる仕組みを実演する装置。日頃から雨水ますを清掃しておくことも、浸水対策の一つになるという。

組織の垣根を越え、周辺施設の連携強化へ

避難誘導後には参加者による振り返りに加え、東京都都市整備局の松岡義樹さんによる講話や、渋谷消防署の磯田正光さんによる講評などが行われた。最後に、東急コミュニティーの寺島陽一郎さんが訓練を総括した。

東京都都市整備局の松岡義樹さん

「地下空間では、地上や河川の状況が分かりにくいこと自体がリスク。渋谷川では過去に、約20分で水位が4.5メートル上昇したこともある。日頃から降雨情報や河川の水位を確認し、状況に応じて安全な出口を選ぶことが重要である」(松岡さん)

左=渋谷消防署の磯田正光さん 右=東急コミュニティーの寺島陽一郎さん

磯田さんは「訓練は大いに失敗していい。課題を抽出し、次の訓練につなげてほしい。各施設や行政、消防が情報を持ち寄り、訓練を繰り返すことが渋谷の安全につながる」と講評。寺島さんも「実際の災害時には、より多くのさまざまな人を誘導しなければならない。現場での初動対応と、組織の垣根を越えた取り組みが重要となる」と総括した。

管理主体の垣根を越えて行われた今回の訓練。参加者にとって、車いす利用者や外国人の誘導、通信が混雑した際の情報共有など、実際の災害に近い状況を経験する貴重な機会となった。いざという時に来街者をより安全に誘導するため、周辺施設同士が日頃からの連携をさらに深めることの重要性を改めて確認する場にもなった。

取材・執筆:小山田滝音 / 撮影:富山淳

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