SHIBUYA × WATCH
渋谷駅で掲出した広告幕を再利用 親子らが「一点物」の財布作り
2026-08-20
渋谷駅周辺で掲出された広告幕を再利用するワークショップ「サステナ工作ラボ」が8月8日、渋谷駅東口地下広場地下2階イベントスペースで開かれた。主催は渋谷駅前エリアマネジメントと東急メディア・コミュニケーションズ。

ワークショップに参加する親子
街を彩った広告幕を、捨てるのではなく別の形で次へつなぐ。同イベントは、掲出を終えた広告幕を新たな製品へと生まれ変わらせる「アップサイクル」を体験してもらうもの。渋谷駅周辺のまちづくりに取り組む渋谷駅前エリアマネジメントの活動や、SDGs、資源循環について住民や来街者に知ってもらうことを目的に企画した。
今回、素材として使ったのは、渋谷・ハチ公前広場で今年5月に掲出されていた「ポイ捨て対策の条例改正」を啓発する広告幕。屋外広告などに使われる耐久性のある「ポリエステルクロス」製で、掲出を終えた幕を裁断して再利用した。多くの人が行き交うハチ公前の風景の一部だった広告が、今度は手のひらサイズのアイテムへと姿を変えた。

今回制作はトライアングル・コインケース(小銭入れ)か、「カップスリーブ」のどちらかを選べる
参加者は、三角形に折り畳む「トライアングル・コインケース」と、コーヒーカップなどに取り付ける「カップスリーブ」のいずれかを選択。テーブルに並んだ生地から好みの色や柄を選び、スタッフの説明を受けながら、ボタン金具を取り付けたり、生地を折り畳んだりして仕上げた。


まずは何をつくるか考えて、一つ一つ柄や色の異なる広告幕の切れ端を選び。スタッフから金具の取り付け方などの説明を聞きながら制作がスタート


機械を使いながら、力を込めて金具やボタンを取り付ける。最後は組み立て作業を行い、コインケースやカップスリーブが完成へ
素材となった広告幕は、高さ2.9メートル、横13.17メートルの一枚の大きな幕。切り取る場所によって色や文字、図柄の現れ方が異なるため、完成するアイテムの表情も一つ一つ異なる。会場では親子連れを中心に、参加者が生地を見比べながら好みの部分を選び、それぞれ一点物のアイテムに仕上げていった。子どもでも参加しやすいよう、製作時間は10~20分程度に設定したという。
廃棄される広告幕を街づくりに生かす
同企画を主催する渋谷駅前エリアマネジメントの大塚奈央さんは「広告シートは約半月ごとに入れ替わるので、そのたびに大きなシートが廃棄されている。毎回捨ててしまうのはもったいないので、アップサイクルやリサイクルで活用できないかという話が上がった」と振り返る。
同団体が管理する渋谷駅周辺の街広告は、広告収益を街づくり活動に還元する貴重な収益源となっている一方、広告幕が短期間で入れ替わり、その都度廃棄されることを課題の一つとして捉えてきたという。広告幕の再利用に向けた検討は2025年度から始めた。今年2月には、デジタルアートイベント「DIG SHIBUYA」の広告幕からポーチを作り、清掃活動の参加者への配布や、関係者に取り組みを紹介するサンプルなどとして活用した。


2月にハチ公前広場に掲出していた「DIG SHIBUYA」広告幕はポ―チに変身。「公園通り」という文字が斜めに入るなど、渋谷ならではの商品に生まれ変わっている
一度は街の風景の一部となり、役目を終えた広告が、バッグやポーチとして再び人の手に渡る。今回は、5月に掲出された渋谷区の「ポイ捨て条例」に関する広告幕を使い、一般の来街者にもアップサイクルの取り組みを知ってもらおうと、初めてワークショップ形式で展開した。

今回のワークショップでは、5月にハチ公前広場に掲出した「ポイ捨て条例」の啓発活動の広告幕を再利用した
「親子で参加するワークショップなので、子どもにも大人にも使ってもらえるものを考えた」と大塚さん。「子どもならお小遣いなどを入れられるコインケース、大人ならコーヒーを飲む時に使えるカップスリーブということで、この2種類を選んだ。夏休みに、子どもたちがごみや環境問題について自主的に考えるきっかけにもなれば」と話す。

杉並区から参加した親子
杉並区から参加した小学3年生の男の子は、コインケース作りに挑戦。「ボタンを付けるところが一番楽しかった」と話し、完成したケースを「大事に使う」と笑顔を見せた。母親は「本来捨てられてしまうものを活用する、すごく素敵な取り組みだと思う。成果物もできるので、夏休みの自由研究にしたい」と話した。

完成したコインケース
広告幕の再利用には、広告主やデザイナーなどとの権利関係の調整が必要になるため、現在は主に渋谷区が掲出した広告幕を使い、事例づくりを進めているという。
今後について、大塚さんは「まずは行政の広告幕を使って事例を積み重ね、将来的には本取組に共感してくださる広告クライアントと連携し、広告を掲出いただくだけにとどまらず、広告シートをアップサイクルするところまで二人三脚で取り組めれば」と期待を込める。「理想としてはグッズ化して『渋谷のお土産』として販売し、その収益を再び街づくりに還元するところまでつなげたい。渋谷の街は発信力も高いので、アップサイクルしていること自体を発信することで、環境問題について考えてもらうきっかけにもできれば」と話す。

ワークショップは11時~17時まで続き、続々と親子が参加していた
街で役目を終えた広告が、新たな形で人の手に渡り、再び街へ戻っていく。そんな小さな循環もまた、変化を続ける渋谷らしい街の風景の一つになっていくのかもしれない。
- サステナ工作ラボ
- 日時:2026年8月8日(土)11:00~17:00
- 会場:渋谷駅東口地下広場B2F イベントスペース(UPLIGHT COFFEE前)
- 料金:無料
- 共催:一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント、東急メディアコミュニケーションズ株式会社
- 後援:渋谷区
- 運営:Relokke(リルッケ)
取材・執筆:フジイタカシ / 撮影:松葉理







