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無関係の人はいない!<結・しぶや>が「福祉」とつながるきっかけに
結(ゆい)・しぶや

無関係の人はいない!<結・しぶや>が「福祉」とつながるきっかけに

「重層的支援体制整備事業」というワードをご存知だろうか。子ども、高齢、障がい、生活困窮などさまざまな「困りごと」を分野別に支援する体制は従来からあったが、生活スタイルの多様化、社会構造の変化によって、人と人とのつながりが希薄化していることなどから、複雑化・複合化した「困りごと」に対して分野を横断した一体的な支援が必要となっている。そのためには、行政機関に限らず、あらゆる地域団体や組織、企業、あるいは地域住民など多様な主体が結びつき、協力していくことが欠かせない。そんな「つながり」を生み出すプラットフォームが渋谷区地域共生サポートセンター<結(ゆい)・しぶや>だ。「福祉」なんて自分とは関係ない!と言わず、知らない世界をのぞく感覚で触れてみてほしい。

「重層的支援体制整備事業」ってなんなんだ?

渋谷区地域共生サポートセンター<結(ゆい)・しぶや>は2023年に渋谷区文化総合センター大和田 9階にオープン。「重層的支援体制整備事業」を担う地域の多様な団体同士がつながるプラットフォームとして誕生した。なぜ「重層的支援体制整備事業」が必要になっているのか? それは困りごとのある人・世帯の支援は、高齢者、障がい者、子どもなど、分野ごとに相談窓口や支援体制が異なるからだ。

ところが! 実際のところ困りごとは分野ごとに都合よく分かれてはくれない。「高齢の両親が障がいのある子の生活を支えている」「ひとり親世帯が困窮状態のため十分な食事を摂ることができない」など複合的に重なることがある。この場合、行政サービスや単発の支援では不十分なことがある。また、支援を受けること自体に拒否感がある、制度そのものを知らないなどの理由から、必要な支援が行き届かないことがあった。

これを解決するためには、渋谷区内で活動するさまざまな組織、団体、個人が分野を超えてつながりあうことで、複雑化・複合化した困りごとを抱える人・世帯、地域で抱える課題に対して、理解を深めることが大切なのだという。<結・しぶや>はそのプラットフォームとして、団体どうしが出会い、学び合い、協働していく機会を生み出し、その結果、団体活動を活性化し、誰もが安心して暮らせる地域づくりを展開する場なのだ。2024年11月に行われた『<結・しぶや>開設1周年 スペシャルオープンデイ』の様子も交えながら、この場所を紹介していきたい。

「『結・しぶや』ってどんな場所?」を一枚にまとめたグラフィック

地域のために活動する団体がふらっと訪れ、交流する場

<結・しぶや>は火曜日から土曜日の10時~19時にオープンしており、利用登録をした団体は、フリースペース・交流スペース、多目的スペースの利用ができる。フリースペース・交流スペースは、一見するとカフェやコワーキングスペースのよう。このように地域団体の利用に特化した場所で、活動のためにふらっと訪れることができるスペースの存在は、実はかなり珍しい。

「開設1周年 スペシャルオープンデイ」の際も、来場した団体や組織のメンバーがフリースペースで交流や情報交換を行っていた。

毎週火曜には「結Cafe」を開催。カフェ感覚で気軽に訪れることで、各団体の活発な交流を促している。

<結・しぶや>の運営は、渋谷区から渋谷区社会福祉協議会へ委託。区内の福祉課題をよく知る社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターのほか、コミュニティマネージャーが常駐している。コミュニティマネージャーは「認定NPO法人サービスグラント」「NPO法人tannely」の2つのNPO法人が曜日ごとに担当している。<結・しぶや>では、団体の困りごとの相談に乗っているほか、団体同士をつなげるサポートも行っている。また、個人からの団体立ち上げの相談も受けている。

<結・しぶや>に共感する個人も参加の機会がある

多目的スペースは、登録団体が会議のほか、セミナーや勉強会に利用可能。<結・しぶや>が企画するイベントも開催している。これまでも「Canvaを使ったPR動画作成」「渋谷活動場所発見イベント」「団体運営のお金に関する課題解決ワークショップ」など団体の活動活性化に役立つようなもののほか、<結・しぶや講座&交流会>として、福祉に関する現状や課題を知る学びの場を定期的に開催。イベントは登録団体だけでなく、個人参加が可能なものもある。

「開設1周年 スペシャルオープンデイ」では、「居場所」を共通のテーマに、渋谷区内で多様な居場所づくりに取り組んでいる4団体のクロストークが行われた。「子ども」「親子まるごと」「生きづらさを感じている方」「若年性認知症の方とその家族」など異なる対象に向けて活動している団体だが、「居場所」というポイントに焦点をあててみると、「いつ来ても、いつ帰ってもいい」「無理に自分のことを話さなくてもいい」など共通のキーワードがあった。

この<結・しぶや>も、団体の方々にとってはまさに「居場所」といえる。

ほかにも個人が<結・しぶや>とつながる仕組みとしては「プロボノとしての参加」もある。仕事上での知識や経験を活かして、社会課題解決のために活動する団体のサポートを行うのがプロボノだ。<結・しぶや>に登録する団体は非営利で、人的リソース、金銭的リソースが不足していることも多い。プロボノのサポートを受けることで活動が活性化し、より支援のすそ野が広がっていくのだ。<結・しぶや>をきっかけに数々の団体でプロボノとの協働が実現している。

フリースクール「みんなのプロジェクト学校」を運営する一般社団法人R5mの中原さん。<結・しぶや>をきっかけにプロボノと出会い、ホームページリニューアルのサポートが実現した。

「つながり」はやがて自分の助けにも!

ひとつの団体では難しかった取り組みも、いくつかの団体がつながり、情報交換することで実現できる場合もある。また、団体のつながりができていくことで「うちでは支援できないけど、あの団体なら」となることも。支援にかかわる主体同士がつながることは、「困りごと」が発生した地域住民の助けになるのだ。

<結・しぶや>を訪れた団体が記入できる「つながりカード」。活動内容のほか、「得意なこと・協力できること」「お困りごと」「関心のあること・つながりたい団体」などを記入しておくと、それを見た個人や団体から「つながりましょう!」と連絡が来ることが。

「開設1周年 スペシャルオープンデイ」では「つながりカード」や団体紹介の展示も行われた。多種多様な団体が「困りごと」解決のために活動しているのがわかる。区内にキャンパスのある大学も<結・しぶや>とつながり、学生が地域活動に参加する事例も増えているとか。

今は「困っていない」という人でも、生活する中で「困った!」が起きないとは限らない。筆者も高齢の親が体調を崩し、困り果てたときに、<結・しぶや>で教えてもらった「福祉なんでも相談窓口分室」を思い出し、適切なアドバイスをもらうことができた。自分がサポートしてもらう側になることを想定し、どのような支援の手があるのか知っておくのは決してマイナスにはならないだろう。今まで縁がないとハードルが高く感じるかもしれないが、そのきっかけとして<結・しぶや>という場所があることを記憶にとどめておいてほしい。

施設概要
  • 名称:渋谷区地域共生サポートセンター<結(ゆい)・しぶや>
  • 住所:渋谷区桜丘町23-21渋谷区文化総合センター大和田9階
  • 電話 090-7183-6243/090-7183-6610
  • 時間:10時~19時
  • 休館:月曜日、日曜日、祝日、年末年始(12月29日~1月3日)
  • 公式: https://note.com/yui_shibuya

開催場所

古川はる香(tannely)

古川はる香(tannely)

渋谷区在住約20年。女性誌、育児誌などでもライターとして活動中。渋谷に住むママ目線での情報をお伝えしていきたいです。