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【レポート】渋谷のアイコンをメディア化する─渋谷モヤイ像が主役の「美肌PR」
ロート製薬「メラノCC」による渋谷の街を舞台としたプロモーションが、いまSNSを中心に話題を集めた。主人公は、ハチ公像と並ぶ、渋谷のシンボル「モヤイ像」。長年、風雨や排気ガスにさらされてきたその“肌”をケアするべく、顔全体にパックを施し、数日後には“美肌”になってお出かけする──そんなユニークなストーリー仕立ての屋外プロモーションが実施された。
「パック→おでかけ→帰宅」 実物の像を使った3段階の仕掛け
企画は、11月24日から始まった「モヤイ像のフェイスパック」で幕を開けた。ロート製薬がビタミンCをキー成分に展開するスキンケアブランド「メラノCC」の新商品をPRするため、渋谷駅西口・渋谷フクラス裏手のモヤイ像が実際に真っ白な“パック”を装着。実物のモヤイ像を3Dスキャンして型取りをして、「集中対策マスクプラス」を忠実に再現したマスクを制作。フェイスパックの瑞々しさを表現するため、表面を樹脂でコーティングしてしっとり感を出しているという。

2025年11月24日、モヤイ像がフェイスパック姿で登場(画像提供=シブヤ経済新聞)
白いマスクに包まれたモヤイ像の姿はインパクト抜群で、通行人の視線を集めたほか、SNSでは「モヤイ像が顔パックしてた!美意識!」「モヤイ像お前どうした?」「まぁ…お肌は大切やからね」「モヤイ像 仮面女子に加入したの?」といった投稿が相次いだ。
パック期間は27日で終了。しかしプロモーションはここで終わらない。翌28日からモヤイ像の周囲には工事用の仮囲いが設置され、「モヤイ像不在のお知らせ」と題した張り紙が掲出された。そこには「このたび、3日間だけ渋谷の街におでかけしております」と、まるで本人からのメッセージのようなユーモアある文言が添えられていた。


2025年11月28日~30日までの3日間、モヤイ像に仮囲いが設置され、”お出かけ中”という貼り紙が掲出
パックで真っ白な肌を取り戻したモヤイ像は、うれしさのあまり“ルンルン気分でおでかけ中”──そんな物語が展開された。
「美肌になったモヤイ」が道玄坂通に登場 街行く人が次々と撮影
28日朝、文化村通り沿いの「道玄坂通広場」に“おでかけモヤイ像”が登場した。真っ白なレプリカ像は実寸の約60%スケールながら、台座の上で堂々たる存在感を放つ。表情もややほほ笑みを帯び、パックを終えた“美肌モヤイ”の新しい一面を感じさせた。隣には巨大な「メラノCC化粧水ボトルイルミネーション」も設置され、フォトスポットとして多くの通行人が撮影を楽しんだ。

3日間、美肌になった「モヤイ像(レプリカ)」は、文化村通りの「道玄坂通広場」に登場
期間中は、ハッシュタグ「#おでかけモヤイ像」を付けてSNS投稿すると、限定ステッカーがもらえるキャンペーンも実施された。
渋谷のシンボルを“体験メディア”化した巧妙なストーリー設計
モヤイ像は、伊豆諸島・新島の観光振興や文化発信を目的として、1980年(昭和55年)に新島村が渋谷区に設置したもので、抗火石製の彫像で、当初は白く輝く姿だった。長年の環境変化でくすんだ肌を、今回の企画で再び磨き上げたことは「街のシンボルを再生させる」という意味でも象徴的だ。このプロモーションの最大の特徴は、リアルな存在であるモヤイ像を“ストーリーメディア”へと転換した点にある。静的な屋外広告ではなく、「パックを貼る → 渋谷の街へおでかけ→元の場所へ帰宅」という3段階の構成で展開される「体験型ストーリー広告」は、見た人の記憶に残りやすく、街全体を巻き込む話題性を生み出した。
さらに、渋谷の象徴であるモヤイ像という“地域資産”を活用しながら、ブランドのメッセージを自然に重ね合わせた点も秀逸だ。物語性と都市性を融合させた完成度の高いプロモーションとして評価できる。
”おでかけ”を楽しんだモヤイ像、元の場所へ帰宅
12月1日、仮囲いが外れると、国道246号線沿いに“おでかけ”から戻ったモヤイ像が姿を現す。実際のところ、重さ約2〜3トンもあるモヤイ像を動かすのは現実的ではない。だが、このプロモーションが徹底しているのは、「道玄坂通」にレプリカ像を設置している間、本物のモヤイ像を仮囲いでしっかりと隠していた点である。まるでディズニーランドのミッキーマウスのように、2体が同時に存在しないよう綿密に計画されていたのだ。

渋谷スクラス裏手、国道246号線沿いの下の場所に帰宅した「モヤイ像」(撮影日:2025年12月1日)
また、3日間の“おでかけ期間”中には、実物のモヤイ像の「清掃」が実施されたという。すすや汚れを落としたその姿は、どこか若々しくもあり、さっぱりした印象も与えている。








