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独断と偏見で「2025年の渋谷」を振り返る
渋谷駅周辺

独断と偏見で「2025年の渋谷」を振り返る

2025年、社会も街も大きな転換期を迎えた一年だった。生成AIの本格的な実用化が進み、暮らしや仕事のあり方が変化するなか、国内では能登半島地震からの復興、大阪・関西万博の開催、日本初の女性首相の誕生、そして円安や物価高への対応など、次の時代を見据えた動きが相次いだ。エンタメやスポーツの分野でも、大谷翔平選手をはじめとする日本人メジャーリーガーの活躍によるドジャースの2連覇、サッカー日本代表のW杯出場決定など、明るい話題が人びとを元気づけ、社会全体が再び前を向き始めた年でもあった。

そうした中で、渋谷の街もまた、新たな再開発プロジェクトの進行や老舗の閉店、次世代カルチャーの芽吹きなど、さまざまな変化が同時に進んだ。2025年に渋谷で注目を集めたニュースやトピックスを振り返り、 “変わりゆく渋谷の日常”を見つめてみたい。

1位:再開発最終章へ 2034年度完成へ向けた全貌が明らかに

2034年度の渋谷の街のイメージ。渋谷ヒカリエ方面から渋谷マークシティ方面まで、銀座線渋谷駅直上を東西に伸びる空中回廊「4階東口スカイウェイ(仮称)」(宮益坂交差点方面からの視点)

渋谷駅周辺で進む「100年に一度」といわれる大規模再開発が、いよいよ最終段階に入り、全ての工事が2034年度に完了することが発表された。2005(平成17)年、渋谷駅周辺地区が都市再生緊急整備地域に指定されて以来、約30年にわたる壮大な都市改造がついに完結を迎えることになる。渋谷駅周辺の大規模再開発は、2012(平成24)年の「渋谷ヒカリエ」開業を皮切りに、「渋谷ストリーム」「渋谷フクラス」「渋谷スクランブルスクエア東棟」と次々に新たなランドマークが誕生し、2024年には「渋谷サクラステージ」が本格開業。街の景観は大きく変貌を遂げた。今後は、2030年度に渋谷駅の最大の課題であった東西の分断を解消するため、銀座線渋谷駅直上の空中回廊「スカイウェイ」が整備される。さらに2031年度には、再開発の象徴ともいえる「渋谷スクランブルスクエア」中央棟・西棟が完成。そして2034年度までには、「ハチ公広場」「東口地上広場」「中央棟4階広場(JR線路上空・仮称)」「西口3階上空施設(仮称)」「中央棟10階広場(仮称)」の5つの広場が整備され、渋谷駅街区の再開発はすべての工程を終える。

2025年7月8日、空中回廊「東口4階スカイウェイ(仮称)」の建設現場見学会が報道関係者向けに開催された。スカイウェイ上からの風景(右側のビルは「渋谷スクランブルスクエア東棟」、正面奥のビルは「渋谷ヒカリエ」)。

歩道橋でも地下道でもない、全長約120メートルの未来都市を象徴する空中回廊「スカイウェイ」は、渋谷スクランブル交差点に匹敵するインパクトを世界に与えるのではないだろうか。2031年度の完成が楽しみだ。

2位:JR渋谷駅ハチ公改札・西口移設  東西自由通路整備へ

渋谷駅「ハチ公改札」移設後のハチ公前広場の風景(撮影2025年4月9日)

渋谷の東西を空中で結ぶ「スカイウェイ」のほか、2030年度に供用開始予定の2つの「東西自由通路」整備に向け、2025年初頭から春にかけてJR渋谷駅全体の再構築が本格化した。まず、1月26日、渋谷駅「ハチ公改札」が宮益坂寄りへ約60メートル移設された。ハチ公前広場・交番側の出入口は廃止され、新改札には「入場専用」と「出口専用」を分ける一方通行動線を導入。これにより、ハチ公広場方面と宮益坂方面の人の流れが整理され、混雑の緩和が図られた。また、ハチ公改札脇にあった地下階段(しぶちか・田園都市線連絡)も閉鎖。この改修は2015(平成27)年から続く駅改良工事の一環で、将来的に幅22メートルの東西自由通路(ハチ公広場~宮益坂方面)が整備される計画となっている。

写真右側の四角い建物が「旧西口」の出入口、左側の奥に新しい出入口が移設された(撮影2025年4月9日)

さらに3月30日には、「渋谷駅西口」の出入口と南改札付近の通路が約50メートル北側(ハチ公広場寄り)へ移設。「新しい出入口」は旧モヤイ像や喫煙所のあったエリアに設けられ、渋谷フクラス方面へは仮囲いの通路でアクセスする形となっている。背景には、旧東急百貨店東横店・JR西口駅舎の解体、および渋谷スクランブルスクエア中央棟・西棟の建設工事がある。将来的には、幅23メートルの東西自由通路(西口~スクランブルスクエア東棟)が完成し、駅の東西移動が格段にスムーズになる見込みだ。

3位:“映画の街”再び 「渋谷二丁目22地区」に大型シネコン誕生へ

左=国道246号線上の「東口デッキ(2階)」から見た計画地、右=青山通り(金王坂)沿いに再開発予定のビル群が並ぶ(撮影2025年1月10日)

渋谷駅東口エリアで進められている新たな再開発計画「渋谷二丁目22地区第一種市街地再開発事業」が、2025年8月に都市計画決定され、かつて映画文化が栄えた東口に再び大型映画館が誕生する。計画地は、国道246号線と明治通りが交わる渋谷駅東口交差点の角地で、北側に渋谷ヒカリエ、北東に昨年開業した複合施設「渋谷アクシュ」が隣接する。敷地面積は約3810平方メートル。建設されるのは地上24階・地下2階、高さ約160メートルの複合ビルで、延べ床面積は約5万900平方メートルを予定している。地下に駐車場、1〜2階に商業エリア、中層階にシネマコンプレックス型の映画館、上層階にオフィスを配置。地下2階では「東口地下歩道」と接続し、地上では2階デッキがJR渋谷駅東口の歩道橋とつながる。さらに3階レベルでは渋谷アクシュとデッキで連結し、ヒカリエ方面とも一体化した立体的な歩行者ネットワークを形成する。

このエリアは、かつて「東急文化会館」(現在の渋谷ヒカリエ)が立地し、「渋谷パンテオン」や「渋谷東急」など多くの映画館が集積していた“文化の殿堂”として知られた場所だ。六本木ヒルズが開業する以前は、東京国際映画祭の主会場としても使用され、映画文化の中心地としての役割を果たしていた。今回の再開発で新たな大型シネコンが整備されることで、東口に映画文化が再び息を吹き返すことになる。今後、2026年度に組合設立、28年度に解体着手し、31年度の竣工を予定する。

4位:渋谷駅再開発で相次ぐパブリックアートの撤去

ハチ公前広場の陶板レリーフ《ハチ公ファミリー》(撮影2013年8月22日)

再開発が進む渋谷駅前で、長年親しまれてきたパブリックアートが次々と姿を消している。2025年は、JR渋谷駅の外壁に設置されていた陶板レリーフ《ハチ公ファミリー》と、ハチ公広場の銅像《地球の上で遊ぶこどもたち》が相次いで撤去された。まず、JR渋谷駅・ハチ公口の外壁を飾ってきた《ハチ公ファミリー》は、1990(平成2)年に完成した縦4m×横11m超の大型陶板レリーフ。「もしハチ公に家族がいたら?」というテーマで、秋田犬たちが星空の中を遊ぶ様子を描いた作品で、渋谷のシンボルとして親しまれてきた。駅改良工事による外壁解体に伴い、2025年1月に撤去が開始。陶板を破損せずに移設・修復するのは困難と判断され、長年親しまれてきた外壁アートは35年の歴史に幕を下ろした。

工事仮囲いの中のパブリックアート《地球の上で遊ぶこどもたち》と「庭園」(撮影2025年3月28日)

続いて3月には、ハチ公像の背後に設けられていた枯山水風の「ハチ公前庭園」と、そこに置かれていたパブリックアート《地球の上で遊ぶこどもたち》の撤去作業が始まった。同作品は2002(平成14)年、渋谷区政70周年記念として設置されたもので、地球儀の上で6人の子どもたちが跳ね回る姿を表現。平和と希望を象徴する作品として、長年ハチ公前広場を静かに見守ってきた。

1959(昭和34)年当時の渋谷駅の風景をプリントした工事仮囲い(撮影2025年3月28日)

撤去作業中、ハチ公像の背景に設置された工事の仮囲いには、1959(昭和34)年当時の渋谷駅の風景写真が掲出され、外国人観光客の人気フォトスポットとなった。撤去後、7月に仮囲いが外されると、そこにあったアートの存在を思い出す人はほとんどおらず、「都市の記憶の儚さ」を象徴する出来事となった。なお、6人の子どもたちのパブリックアートは現在渋谷区が保管中で、将来的な再設置の可能性も残されている。

5位:代々木公園に新拠点「BE STAGE」 “都市型公園”の新モデル

新たに誕生した公園施設「代々木公園 BE STAGE(ビーステージ)」外観

岸記念体育館跡地を活用して整備された「代々木公園 BE STAGE」が、2025年2月20日に一部開放され、3月15日から施設・店舗のオープンが始まった。渋谷と原宿を結ぶ都市の緑地に、新たなカルチャーと活動の拠点が誕生した。今回の整備では、国立代々木競技場南東側の岸記念体育館跡地と東京都水道局ポンプ所跡地を活用し、公園面積を約4,182㎡拡大。北側は「みどりと集いのゾーン」、南側は「雑木林とヒーリングガーデンのゾーン」として整備される計画だ。先行してオープンした北側ゾーンに位置する「BE STAGE」は、かつて日本のスポーツ団体の本部が集まっていたエリアであり、スポーツ・健康・文化を軸にした新しい公園活用モデルとして注目されている。公園中央には「にぎわい広場」や「発信テラス」、「アーバンスポーツパーク(スケートボード広場)」が整備され、スケート、ダンス、ランニング、ヨガ、音楽、アート、食といった多様な活動を支える拠点として活用されている。

また、3階建て複合施設の1階には、ハワイの人気レストラン「Tiki’s Grill & Bar」や、カフェ「NORTH SHORE CAFE」が出店。2階はランナー向けショップ「ニューバランス Run Hub 代々木公園」、3階はスポーツスクール「YOYOGI-PARK “まなぶ”」「YOYOGI-PARK “たのしむ”」が開講するなど、“都市と自然が共生する次世代公園”としてその活用が期待されている。昨今、渋谷では宮下公園や北谷公園など、公園の新しい活用が進んでおり、同所もその一つとなる。

6位:駅そば文化の象徴「本家しぶそば」渋谷に復活!

駅近、道玄坂沿いにオープンした 「本家しぶそば 渋谷店」

渋谷駅の“駅そば”として長年親しまれてきた「本家しぶそば」が、待望の復活を果たした。かつて東急線中央改札を出て大階段を下った先にあった旧・渋谷駅店は、再開発の影響で2020年に閉店。多くのファンに惜しまれながら姿を消したが2025年9月14日、5年ぶりに道玄坂下で新店舗として再出発した。新しい店舗は、黒一色の外観に白いのれんが映える落ち着いた佇まい。1階にはコの字型カウンター12席と厨房、2階には26席のテーブル席を設けた2フロア構成。あの名物オーダーコール「かーきーあーげー!」の声が再び響き、往年のファンを懐かしい気持ちにさせる。一方で、英語メニューの導入など観光客や女性客にも配慮した現代的な工夫も加えられている。1000円を超えるランチが当たり前になった今、手早く、安く、そして心温まる一杯が戻ってきたことを素直に喜びたい。

7位:モヤイ像45年目の新天地 “美肌PR”にも協力

「モヤイ像」移設除幕セレモニー。関係者によるテープカットの様子(撮影2025年1月22日)

渋谷駅西口で長年親しまれてきた「モヤイ像」が、設置から45年を迎え、新たな場所で再スタートを切った。2024年11月28日から29日にかけて深夜に移設作業が行われ、2025年1月22日、渋谷フクラス西側広場で除幕セレモニーが開かれた。「モヤイ像」は1980年、新島観光協会が島のPRを目的に制作したもので、新島産のコーガ石で作られている。渋谷駅周辺の再開発に伴い、旧東急東横店西館・南館の解体が決まり、像は新たな待ち合わせスポットとして渋谷フクラス裏手へ“引っ越し”した。除幕式には渋谷区の長谷部健区長や新島村の大沼弘一村長らが出席。「もやい」は島の言葉で「助け合い」を意味し、大沼村長は「争いの絶えない時代だからこそ、“もやい精神”を世界に広げたい」と語った。

2025年11月24日、モヤイ像がフェイスパック姿で登場(画像提供=シブヤ経済新聞)

また11月には、モヤイ像とコラボしたユニークな“美肌PR”も話題となった。ロート製薬のスキンケアブランド「メラノCC」によるプロモーションで、モヤイ像が実際にフェイスパックを装着。渋谷のアイコンがリアルな“体験型広告”としてメディア化され、SNSでは「モヤイ像が美容に目覚めた!」と大きな注目を集めた。

8位:東口に新ランドマーク誕生へ 宮益坂地区が本格始動

明治通りと大山街道(宮益坂)が交差する「宮益坂下」の風景 (撮影2025年4月29日)

渋谷・宮益坂地区で検討されてきた大規模再開発「宮益坂地区第一種市街地再開発事業」が2025年4月30日、東京都から市街地再開発組合の設立認可を受け、本格始動した。計画地は渋谷駅東口に隣接する約1.4ヘクタール。宮益坂下交差点から明治通り沿いにかけて広がるエリアで、渋谷東口会館(シブヤボウリング)や旧りそな銀行渋谷支店跡、宮益御嶽神社などを含む3街区(A・B・C街区)で構成される。事業主体は宮益坂地区市街地再開発組合で、東急とヒューリックが協力参画する。

宮益地区の開発イメージ(中央ビルが「A街区」、渋谷ヒカリエに隣接する右側のビルが「B街区」)

A街区には地上33階・高さ約180メートルの高層複合ビルを建設。国際会議にも対応する多目的ホールやオフィス、宿泊施設、商業施設などを備える。B街区には店舗を中心とした商業施設を整備し、空中階に広場を設ける。C街区では宮益御嶽神社を再整備し、地域文化の継承と交流拠点の創出を図る。また、地下から地上までの移動をスムーズにする「アーバン・コア」や、A・B街区を結ぶ空中通路、地下広場を整備し、渋谷ヒカリエや将来の「スカイウェイ」と連携。渋谷駅東口の新たな回遊動線を形成する。宮益坂(大山街道)の再整備も進められ、交差点広場や神社前広場など、人が主役のにぎわい空間を創出する計画だ。着工は2027年度、竣工・開業は2031年度を予定。渋谷ヒカリエに続く「東口の新たな顔」として期待が高まっている。

9位:渋谷発の「麻辣湯」が全国的ブームに

2007年、渋谷・桜丘町にオープンした「七宝 麻辣湯(チーパオ マーラータン)」の1号店

2025年、渋谷発の食トレンドの中で特に存在感を放ったのが「麻辣湯(マーラータン)」だ。ブームの火付け役は、2007(平成19)年に桜丘町で誕生した「七宝 麻辣湯(チーパオ マーラータン)」。ラーメン王として知られる石神秀幸さんが、中国で200軒以上を食べ歩き、実際に現地で働きながら研究を重ねて独自の味を完成させた。1号店のオープン以来、じわじわとファンを増やし、今年ついに“トレンドフード”として空前の人気を博している。その勢いは止まらず、2025年に入ってからも新店が次々と登場。1月には宇田川町に「北斗麻辣湯」、10月には桜丘町に「李暁七マーラータン 渋谷サクラステージ店」、12月には代官山町に「転転(テンテン)麻辣湯」がオープンするなど、渋谷エリアでの広がりを見せている。

左=2025年10月、渋谷サクラステージにオープンした「李暁七マーラータン」、右=同10月、道玄坂1丁目にオープンした名古屋の人気店「矢場味仙」

しばらくはマーラータンブームが続きそうだ。さらに「辛いスープ」ブームの流れを受け、名古屋名物「台湾ラーメン」で知られる人気店「矢場味仙」が10月、道玄坂1丁目に出店したことも話題となった。

2025年5月15日、 代官山にオープンしたLA発のドーナツショップ「ランディーズドーナツ」

こうした「辛うま」「激辛」系の人気が高まる一方で、甘いスイーツのトレンドも健在だ。5月にはLA発のドーナツショップ「ランディーズドーナツ」の日本1号店が代官山の商業施設「ログロード代官山」内にオープン。さらに、「I'm donut?グルテンフリー」(渋谷2丁目)や「I'm donut?グルテンフリー&ヴィーガン」(神宮前5丁目)にも行列が絶えず、ドーナツが“癒やし系スイーツ”として注目を集めている。

10位:老舗閉店が相次ぐ 「三千里薬品」「かつ吉」も

2025年、渋谷の街で長年にわたり親しまれてきた老舗の閉店が目立った 。昨年末には、渋谷駅前スクランブル交差点に面して62年間営業を続けた老舗薬局「三千里薬品 神南店」が閉店。さらに今年6月には、明治通り沿いのとんかつ専門店「かつ吉 渋谷店」(同渋谷3)が再開発に伴い一時閉店した。いずれも、渋谷を象徴する“昭和の面影”を残してきた店舗であり、その閉店は多くのファンに惜しまれた。

2024年12月31日に閉店した老舗薬局「三千里薬品 神南店」。2025年4月にレンタルスペースとしてリニューアルした(画像提供=シブヤ経済新聞)

「三千里薬品 神南店」は1962(昭和37)年、「三千里薬品」1号店として開業。赤と青のロゴマークと電飾看板、店頭から流れる「ほら、三千里。ほら、三千里。渋谷の三千里……」という「猫ふんじゃった」の軽快なジングルで知られ、渋谷のランドマークとして長年親しまれてきた。前身は1952(昭和27)年創業の「三千里食堂」で、戦後の復興期に「ハチ公前のくすり屋さん」へと転身。定価販売が主流だった時代に割安な価格設定で人気を博した。2024年12月31日をもって閉店後、その跡地を活用し、2025年4月にレンタルスペース「三千里跡地」をオープン。地下から2階まで白を基調とした3フロアで構成し、屋外ビジョンを備えたPRイベントやポップアップショップの利用を進める。老舗のDNAを継ぎながら、新たな時代の「表現の場」として再スタートを切っている。

一方、明治通り沿い、渋谷三丁目で36年にわたり営業してきた老舗とんかつ店「かつ吉 渋谷店」も、6月14日をもって一時閉店した。1958(昭和33)年に日本橋で創業した老舗の支店として1989(平成元)年12月にオープン。ケヤキの巨木を使った分厚い無垢材テーブルや骨董の器を配した内装が特徴で、「特上ヒレかつ」や「大海老フライ盛り合わせ」などの看板メニューは、外国人観光客にも人気だった。今回の閉店は、同店が入居していた「KDC渋谷ビル」を含む明治通り沿い6棟の再開発によるもの。発注者は東京建物で、6月27日から解体工事が進められている。新ビル完成後の2030年春ごろ、かつ吉は同じ場所での再出店を予定しているという。

左=渋谷三丁目の老舗とんかつ店「かつ吉」(撮影2024年)、右=道玄坂プラザの老舗喫茶店「珈琲店トップ」(撮影2025年5月)

左=桜丘町のディスカウントストア「一風堂」(撮影2018年10月19日、写真は旧ショップ。その後、渋谷サクラステージ開発工事に伴い同じ町内に移転)、右=明治通り沿い、細長いショップで知られた自転車修理店「大木サイクル」(撮影2025年3月)

そのほか、2025年には、道玄坂プラザで53年間営業を続けた「珈琲店トップ」(5月20日閉店)をはじめ、「すみれ September Love」のヒット曲で知られるバンド・一風堂の名前の由来ともいわれる桜丘町のディスカウントストア「一風堂」(9月26日閉店)、ご主人の逝去により約90年の歴史に幕を下ろした自転車修理店「大木サイクル」(4月末閉店)など、街の風景の一部となっていた店々が静かにその幕を閉じた。

取材・執筆

編集部・フジイ タカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。