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渋谷に”平均年齢73歳”のお茶屋「G-CHA & Ba-CHA」 シルバー主役の新しい働き方を発信
宮益坂下の交差点近くに3月20日、平均年齢73歳のスタッフが働くテイクアウト専門のお茶屋「G-CHA & Ba-CHA(ジーチャバーチャ)」がオープンした。若者の街として知られる渋谷から、シルバー世代の新しい働き方を発信する試みとして注目を集めている。


宮益坂下から1ブロック目の角を左折すると、レンガ調のかわいらいい建物がみえてくる。ボーリング場「シブヤボール」の右手だ
出店場所は、かつて「センタービーフ 渋谷宮益坂店」が営業していたビル1階の跡地。「宮益坂地区」の大規模再開発の対象区域に含まれており、工事の着工までの数年間を活用した「期間限定店舗」として展開する。都市の更新のはざまで、新たな実験的な取り組みが動き出した。
運営は、「友達がやってるカフェ」「ME ME COFFEE」など、SNSを中心に話題となる体験型店舗の企画を数々手がけてきたENTAKU produceと、東急による共同プロジェクト。接客スタッフはタレントではなく、この店で働くために求人募集で集まった一般の高齢者たちで構成され、最年長は80歳。お茶の提供とともに“元気”を届けることをコンセプトに掲げる。

入口を入ると、左側に「健康」と書かれた溜まりスペース。右側に商品の注文スペースがある
店では「爺茶(ジンジャーほうじ茶)」や「婆茶(ジャスミン緑茶)」などユニークなネーミングのドリンクのほか、抹茶ラテなど計7種類を提供する。
同店の責任者でENTAKUの吉田純貴さんは、「話題性だけで終わらせず、しっかりおいしいお茶として成立させることを重視した。世代を問わず楽しめる味に仕上げている」といい、静岡県に自社農園・工場を持つTeaRoomから茶葉や抹茶を仕入れ、品質にもこだわったという。
注文から受け取りまで、ほほ笑ましいひととき


箱からオーダーシートを一つ取り、希望のメニューなどを記載する。ペンは、シルバーでも見やすい視認性の高いピンク色の蛍光を採用しているという
来店客は入店後、オーダーシートにドリンクの種類、温度、トッピング、カップの色、グッズ購入の有無などを記入し、レジで注文する。レジにはおじいちゃん、またはおばあちゃんのスタッフが1人座っており、そこで最初のコミュニケーションが始まる。この日は、サングラスをかけた73歳の京子さんが担当し、注文内容の確認と会計を行った。支払いは前払いで、キャッシュレス決済のみ。

受付担当は73歳の京子さん
京子さんが「オーダーの文字が小さい」と話しながら、巨大ルーペで注文内容を確認する姿も店のほほ笑ましい光景の一つだ。


左=ドリンクのほか、Tシャツ、キャップなどオリジナル商品も充実。右=商品提供を待つスペース
注文後は、提供の順番が来るまでのれんの前で待機。番号を呼ばれると、いよいよのれんの中へ。

「D&G」ではなく「g&b」のロゴが入ったアウターに身を包むおじいちゃん、おばあちゃん。一人ひとりの個性に合わせたスタイリングも印象的だ
のれんをくぐると、障子に囲まれた和テイストのスペースが広がっている。大きなカウンターの中には、おじいちゃん、おばあちゃんスタッフ2人が笑顔と決めポーズで出迎えてくれる。


注文したのは、「健康」の文字が入ったピンクのカップで提供される「爺茶(ジンジャーほうじ茶)」(780円)と、「茶」の文字入りの緑のカップに入った「チョコレート抹茶ラテ」(960円)
来店客の名前を一人ひとり手書きしたラベルをカップに貼り、商品を手渡しながら、世間話や趣味の話など自然な会話が生まれる。おじいちゃん、おばあちゃんとのコミュニケーションを重視した接客が特徴だ。店内は来店客の笑い声が絶えず、通常のカフェにはない、アットホームな雰囲気が漂う。
「若者の街」にあえてシニアを主役に
この企画は、再開発エリアの遊休不動産の活用として、東急側から「渋谷を盛り上げる店を」というオーダーを受けたことがきっかけだったという。
吉田さんは「渋谷は若者の街というイメージが強い。その中に、シニアの方がかっこよく働く店があったら面白いのではと考えた。もともと社内でもシニアの活躍の場をつくりたいという思いがあり、それを掛け合わせた」と振り返る。

スタッフは現在約16人。60代半ばから80代まで幅広く、1日6人ほどでシフトを回す。接客は表に立つシニアスタッフが担い、ドリンクの調理などは若いスタッフがサポートする体制だ。
渋谷という立地ついて、吉田さんは「若い世代とシニア世代が自然に交わる場をつくりたかった。実際にスマートフォンの操作を教え合ったり、昔の話をしたりと、コミュニケーションが生まれている」と手応えを語る。
「休みたい時に休む」――無理をしない働き方
店の特徴は、シルバー世代が無理なく働ける環境づくりだ。「休みたい時に休む」「疲れたらすぐ言う」「楽しいから働く」という3つのルールを掲げ、従来の労働観にとらわれない柔軟な働き方を導入。接客は基本的に座ったまま行い、注文は来店客が記入するオーダーシート制を採用するなど、身体的負担を軽減する工夫が施されている。

シルバーが働きやすい環境を提供する「 3つのルール」
「体調が優れなければ無理をしない。場合によっては店を閉めることも含めて、柔軟に運営している」と吉田さん。
さらに、行列ができる混雑時には来店客が手伝う「孫制度」も導入。行列整理などを担ってもらう代わりにドリンクを提供する仕組みで、世代を超えた関わりを生み出す試みとして今後、混雑状況に合わせて導入を予定している。
「年齢の壁を越えたい」――働く側の思い
店頭に立つスタッフの一人、78歳の幸子さんは、「世の中には元気で活動的なアクティブシニアがたくさんいるのに、日本では年齢制限の壁が大きい」といい、「健康で前向きに生きたいと思っている人は多い。ここは、そうした人たちが社会と関われる場だと思う。渋谷で若い人たちとコミュニケーションが生まれることにも魅力を感じる」と同所で働く魅力を語る。

「誰もが社会と関われるようになれば、生きがいにもつながるし、健康寿命も延びる」という78歳の幸子さん
さらに核家族化やスマートフォン中心の生活によって世代間の接点が減る中、「直接顔を合わせて話す場があることで、お互いに良い刺激になる」とも。

最年長80歳の勇さん
勇さんは、「ここは無理なく通えるのがいい。働くというより、自分にできることを少しでも役立てられたらという気持ち」と話し、「実際にやってみるととにかく楽しい。若い人との出会いもあり、笑顔が多い場所」と笑顔を見せる。勇さんは海外で働いた経験も豊富で、外国人客に英語で応対することも。店内には終始笑い声が広がり、来店客とスタッフの自然な会話が交わされていた。
再開発の「合間」に生まれる都市の実験
この店は契約上、約1年半から2年程度の期間限定店舗となる予定で、再開発の進行に応じて終了したり延長したりする可能性があるという。吉田さんは「年齢ではなく“気持ちの若さ”が価値になる場をつくりたかった。働く人も来る人も元気になれる循環を生みたい」と話す。
再開発によって姿を変え続ける渋谷。その“はざま”に現れた小さな店舗は、単なる話題づくりに留まらず、これからの社会における働き方や世代の関係性を問いかける存在でもある。ファッションや音楽といったカルチャーを発信してきたこの街で、「G-CHA & Ba-CHA」は“シルバーの働き方”という新たなテーマを提案する。

”FOREVER YOUNG FOREVER GENKI”の電飾
スローガンは「若さって、年齢じゃなくて気持ちのこと!」――世代や役割を越えて人が交わるこの場所が、渋谷にどのような新しい風景を生み出していくのか。その行方に注目が寄せられる。
- G-CHA & Ba-CHA(ジーチャバーチャ)
- 住所:渋谷区渋谷1-12-24 707渋谷ビル1階(渋谷駅 徒歩2分)
- 営業:11:00〜19:00(※スタッフが疲れた場合、一時休憩を取ることも)
※テイクアウト専門のお店
※キャッシュレスのみ - 公式:インスタグラム








