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渋谷駅工事仮囲いが巨大キャンバスに 太田宏介さん「多様性」描くアート公開
渋谷駅街区開発計画の工事現場で8月18日、アーティスト・太田宏介さんが手がける「渋谷駅街区西棟工事仮囲いアートプロジェクト」の一般公開が始まった。
東京都が進めるまちなかにアートの景色を広げていく文化事業「TOKYO CITY CANVAS」に採択された同プロジェクトは、東急と一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメントとの共創、渋谷区の後援で実施される官民連携の取り組み。
8月18日から一般公開が始まった「渋谷駅街区西棟工事仮囲いアートプロジェクト」
プロジェクトのテーマは「~Shibuya Culture Jungle~多様性を輝かせる」。多文化共生やジェンダー意識、障害理解といった現代社会が直面する課題を、アートを通じて来街者に投げかける。多様な価値観や背景を持つ人びとが互いを認め合い、活躍できる社会を目指す姿勢は、渋谷区が掲げる「ちがいを ちからに 変える街」という理念と重なる。
作品の掲出場所は現在、「渋谷スクランブルスクエア西棟」の建設工事を進む渋谷駅街区
キャンバスは、今年3月に移設された「JR渋谷駅西口」に向かう通路を囲む白い仮囲い
第1弾となる今回は、渋谷駅から渋谷フクラスの間に通じる通路沿い、渋谷スクランブルスクエア西棟新築工事の北側仮囲いをキャンバスに見立て、太田宏介さんの既存作品の中から「花」「コウモリ」など動植物をテーマにした約15点を展示する。
ギラギラした夏の太陽に負けない鮮やかな色彩と力強いフォルムが特徴の太田さんの作品
無機質で殺風景だった工事仮囲いに明るさと華やぎをもたらす動植物をテーマとしたアート
高さ3メートル、幅約25メートルにわたる巨大な仮囲いを、鮮やかな色彩と生命感あふれるフォルムが埋め尽くし、同所を行き交う通行人の目を引く。
アーティスト・太田宏介さん。TBS系ドラマ「ライオンの隠れ家」に登場した絵も太田さんが描いた
太田さんは1981年、福岡県生まれ。幼少期に知的障がいを伴う自閉と診断されたが、11歳で絵画教室に通い始めたのをきっかけに絵画と出合い、15歳で初個展を開催。以降、全国各地で個展を開き、その自由で独創的な作風は国内外で高く評価されている。2025年1月には西武渋谷店で個展とライブペイントを開催し、TBS系ドラマ「ライオンの隠れ家」では登場人物が描く絵として作品が採用されるなど、近年ますます注目を集めている。
今回のプロジェクトは、工事現場の仮囲いという「都市の余白」に創造性と彩りをもたらし、街に開かれた展示空間を生み出す試みとなる。工事期間中であっても、誰もがアートと出会える場を提供し、日常の中に多様性と共感を感じられる時間を届けていく。
第2弾は2025 年11月末頃に公開予定。太田さんが実際に渋谷を歩き、街の空気や風景を自らの感性で切り取った新作を描き下ろし、仮囲いをさらに彩るという。完成すれば、渋谷の街の個性と多様性を一層際立たせる展示となりそうだ。