心躍る世界を、渋谷から。

SHIBUYA × WATCH

モントリオール発の「参加型アート」  テクノロジーが渋谷の街を遊び場に変える!
国道246号線デッキ/北谷公園

モントリオール発の「参加型アート」  テクノロジーが渋谷の街を遊び場に変える!

現在、テクノロジーとアートが融合する都市型カルチャーイベント「DIG SHIBUYA 2026」(2月13日~15日)が、渋谷駅周辺で開催されている。街なかの広場やストリート、歩行者デッキといった公共空間が舞台となり、道行く人びと自身が作品の一部になっていく――それがこのイベントの醍醐味だ。なかでも、カナダ・モントリオール発のアートがひときわ強い存在感を放つ。この記事では参加体験にフォーカスし、注目の2作品をレポートする。

指先のドローイングが渋谷の風景に MAPPの参加型マッピング

カナダ・モントリオール発のアート集団「MAPP(マップ)」が2月13日夜、渋谷区立北谷公園でライブイベントを行った。

MAPPは「街をPLAYGROUNDにする」というビジョンのもと、プロジェクションマッピングをより自由で開かれた表現へと広げてきたグループ。彼らの大きな特徴は、「MAPP_BIKE(マップバイク)」と呼ばれるプロジェクターを搭載した自転車を使うこと。移動しながら、場所を選ばず建物の壁面や地面へ映像を投影できるため、街そのものがライブペインティングのキャンバスとなる。

左=タブレットを使い慣れている子どもたちは、指先で上手にイラストを描き上げていく 右=プロジェクターを搭載する自転車「MAPP_BIKE」で、即座に描いたイラストを地面や壁に映し出す

当日の北谷公園では、親子連れの参加者たちがタブレットに動物や顔、模様、文字など思い思いの絵を描いていた。データはその場でアニメーション化され、すぐさま建物の壁や地面に映し出していく。自分の描いた線やイラストが音楽に合わせて揺れ、回転し、大きく広がる。

自分の描いたイラストが投影され、歓声を上げて喜ぶ子どもたち。子どもたちのアクションに合わせて、イラストをピンチイン(縮小)したり、ピンチアウト(拡大)したり…、即興的にイラストに動きを付けていく

さらに、通り過ぎる人の動きや周囲の風景とも重なり合う。子どもたちは歓声を上げながら飛び跳ね、寝転び、光の中へと駆け込んでいった。まさに、参加することで完成するアートである。

大掛かりな設営を伴う従来のプロジェクションマッピングとは異なり、軽やかで柔軟、そして即興的。自分の身体と映像がひとつになる感覚を味わえるのも、MAPP_BIKEならではの魅力だろう。

見慣れた公園の風景に想像のレイヤーが重なったとき、渋谷の街 はこれまでとは違う表情を見せる。とにかく子どもの無邪気な歓声が、この作品の価値を物語っている。

開催概要
  • 名称:MAPP_PLAYGROUND(マップ_プレイグラウンド )
  • 会期:2026年2月13日(金)・14日(土)夕方~夜
  • 会場:渋谷区立北谷公園
  • 料金 :無料

偶然がハーモニーに 参加型アート「Hello! Duetti」

もう一つの話題作が、モントリオールを拠点に活動するアート&デザインスタジオ「Daily Tous Les Jours(デイリー・トゥ・レ・ジュール)」による日本初上陸のインスタレーション《Hello! Duetti》だ。会場は、渋谷スクランブルスクエアと渋谷ストリームをつなぐ「国道246号横断デッキ」上、かつて東横線のホームがあった場所である。

「ベンチ」の回転スピ―トや、回転方向などで音が変わる

作品は、回転することでコーラスを奏でる「ベンチ」と、踏む・触れる・歩く動作がリズムへ変わる「ボラード」の2つの装置で構成される。使い方の説明が特別になくても、作品に近づき、遊具のように揺らしたり、触れたりするだけで、音が鳴る。誰かの動きに別の誰かが呼応し、偶然のハーモニーが生まれる。イタリア語で「二重奏」を意味する“Duetti”。その名の通り、この作品は他者の存在によって完成する。一人では生まれない音楽が、通りすがりの見知らぬ人との間に立ち上がる。

「ボラード」は、時計まわり、逆まわり、歩く速さ、踏む力など、歩行の動作で様々な音を奏でる

スタジオメンバーのメリッサ・モンジアさんは、「東京といえば多くの人が思い浮かべる街が“渋谷”。忙しく移動する人がふと足を止め、つかの間でもリラックスできたら」と語る。デッキを行き交う人だけでなく、駅のホームや電車の窓からも作品が視界に入り、渋谷の街に小さな“余白”や“潤い”を生み出している。

開催概要
  • 名称:Hello! Duetti(ハロー!デュエッティ)
  • 会期:2026年1月23日(金)〜2月27日(金)
    ※国道246号横断デッキの開放時間に準ずる
  • 会場:国道246号横断デッキ(旧東横線渋谷駅ホーム)
  • 料金 :無料

モントリオールのアーティストたちに共通しているのは、完成された作品を提示するのではなく、「人が関わることで初めて生まれる体験や風景」を設計している点だろう。通りすがりの観客はいつの間にか参加者となり、都市の風景を共につくる側になってしまう。そこに、このプロジェクトならではの魅力がある。

再開発によって更新を続ける渋谷の公共空間に、こうしたアートやプロジェクトが加わることで、人と人の距離は自然と縮まる。「なんだろう?」と足を止めた瞬間、そう、あなたもすでにその一部となっている。ぜひ渋谷の街で体感してみてほしい。

取材・執筆

編集部・フジイ タカシ

渋谷の記録係。渋谷のカルチャー情報のほか、旬のニュースや話題、日々感じる事を書き綴っていきます。